2023年ピラティス論文

・ヨガやピラティスと疲れ目の関係
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36556992/

Sung YH. Suboccipital Muscles, Forward Head Posture, and Cervicogenic Dizziness. Medicina (Kaunas). 2022 Dec 5;58(12):1791. doi: 10.3390/medicina58121791. PMID: 36556992; PMCID: PMC9786116.

この論文によると、
後頭下筋群(大後頭直筋、小後頭直筋 、上頭斜筋 、下頭斜筋)は、

(1)姿勢維持に関与する遅筋線維が主体である、
(2)これらの筋の付着位置は、運動を誘発するには力学的に非効率であり、また深層に位置する短いサイズである。
(3)高い筋紡錘密度、筋紡錘の特殊な特徴を示し、ゴルジ腱器官(GTO)はほとんどない、

という特徴を持つ。したがって、これらの筋の主な機能は以下のようにまとめられる。

(1)前庭や眼球の入力による感覚情報を伝達するセンサーとして機能し、上部頸椎の監視や認識を助ける、
(2)頭頸部の運動のオペレーターとしてではなく、上部頸椎の安定化として働く、
(3)頭部の位置や正確な動きを制御し、眼と頭部運動の協調に役立つ



・ピラティスとヨガは、心身への直接効果のみならず、間接的に健康増進のための行動を誘発し、医療的、公衆衛生的にも有用性が期待
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33917304/

Lim EJ, Hyun EJ. The Impacts of Pilates and Yoga on Health-Promoting Behaviors and Subjective Health Status. Int J Environ Res Public Health. 2021 Apr 6;18(7):3802. doi: 10.3390/ijerph18073802. PMID: 33917304; PMCID: PMC8038747.

ピラティスやヨガが健康増進行動や主観的健康状態に与える影響について

【背景】

身体的にも心理的にも健康的な生活を送るためには、運動が不可欠であるという考え方は、今や議論の余地がない。

医学的にも公衆衛生的にも重要な課題である。

ピラティスとヨガが身体への直接的なメリットを示唆する研究は多数存在する。

しかし、ピラティスやヨガが二次的、間接的な効果をもたらすかどうかは、あまり知られていない。健康的な生活を送るためには、一般的に身体的・心理的な健康に役立つとされるライフスタイルを幅広く取り入れ、自分の健康についてポジティブな考えを持つことが必要かもしれない。

【目的】

ピラティスやヨガへの参加が健康増進のための行動を誘発し、参加者の心身の健康状態の自己評価にポジティブな影響を与えるか、身体的・精神的ウェルビーイングの上昇をどの程度伴うかどうかを検討する。

【対象者および方法】

ピラティスやヨガ未経験の男女30-49歳(平均年齢35.47歳)の成人ボランティア90名が対象。

被験者を無作為に3つのグループに分けた。

・ピラティスグループ

・ヨガグループ

・コントロールグループ;どちらの運動クラスにも参加しない

すべての参加者は、

健康増進ライフスタイル・プロフィール(HPLP II)と健康自己評価尺度(HSRS)の2つのアンケートに、それぞれのプログラムの前後に回答した。

・Health Promoting Lifestyle Profile (HPLP);

HPLP II は4 点リッカート スケールを使用し、スコアが高いほど健康増進活動への参加が多いことを示し、52 項目で構成

・The Health Self-Rating Scale (HSRS); 健康の質の包括的な自己評価

ピラティスグループ、ヨガグループが行ったエクササイズプログラムは以下の通り。

1時間のセッションを週3回、8週間のエクササイズプログラム。

ピラティスは経験3年以上のBalanced Body instructors、ヨガも同等の指導者が担当。

運動頻度:週3回

運動強度:初級/中級(6回×3セット)

運動時間:1回50分(ウォームアップ、クールダウンを含めて1時間セッション)

エクササイズの種類 ;ピラティス(マット)、ヨガ

ピラティスエクササイズの目的と注意点

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8038747/table/ijerph-18-03802-t0A1/

ヨガエクササイズの目的と注意点

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8038747/table/ijerph-18-03802-t0A2/

ピラティスプログラム

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8038747/table/ijerph-18-03802-t0A3/

ヨガプログラム

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8038747/table/ijerph-18-03802-t0A4/

【結果】

プログラム終了後、ピラティスとヨガのグループは、コントロールグループよりも健康増進行動への取り組みが高いことが示された。

また、HSRSで測定した主観的な健康状態も、プログラム終了後、ピラティスやヨガの参加者はコントロールグループに比べ、有意に改善した。

ピラティスグループは、自己評価による健康増進行動と健康状態に対応するHPLP IIとHSRSの2つの指標で最も大きな改善を認めた。

(→ 全体的な結果としては、ピラティス>ヨガ>コントロール )

これらの影響に性別による有意な差は認められなかった。

【結論】

ピラティスとヨガが参加者の健康増進行動を促し、主観的な健康状態についてポジティブな信念を抱かせ、それによってポジティブな強化のサイクルが動き出す。

ピラティスやヨガの普及が、個人の健康に悪影響を及ぼす行動を変えるための効果的な介入戦略として役立つという明確な証拠を提供することで、本研究は、医療従事者や公衆衛生当局に実用的な示唆を与える。

・ピラティス、マッケンジー法、コア安定化エクササイズの慢性腰痛への効果に優劣を示す明確エビデンスは見つからない、というメタ解析論文

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36912214/

Wong CM, Rugg B, Geere JA. The effects of Pilates exercise in comparison to other forms of exercise on pain and disability in individuals with chronic non-specific low back pain: A systematic review with meta-analysis. Musculoskeletal Care. 2023 Mar;21(1):78-96. doi: 10.1002/msc.1667. Epub 2022 Jul 1. PMID: 36912214.

慢性非特異的腰痛を持つ人の痛みと障害に対する他の運動形態と比較したピラティスエクササイズの効果: メタ解析による系統的レビュー

【目的】

慢性非特異的腰痛症(CNSLBP)患者の痛みと障害に対するピラティスエクササイズ(PE)の効果を他の運動形態と比較し、臨床実践と将来の研究に役立てること。

【対象者および方法】

CNSLBPの成人に対するPEと他の形態の運動が、痛みと障害に及ぼす効果を比較した無作為化比較試験(RCT)を対象に6つの電子データベースにより文献検索、系統的レビューとメタ解析を行った。

ピラティスエクササイズと、

一般的なエクササイズ(GE;general exercise)、

方向特異的なエクササイズ(DSE;Direction-specific exercise)=McKenzie法

脊椎安定化エクササイズ(SSE;spinal stabilization exercises)

を比較した。

【結果】

11のRCTが含まれた。総じてエビデンスの確実性は低かった。

エビデンスの確実性は低いものの、痛みの軽減においてPEはGEよりも効果的であることが示された[Effect size (ES) 0.44]。

さらに、エビデンスの確実性は非常に非常に低いが、

痛みの軽減において、PEはDSEよりも効果的であり(ES 0.65)、痛みと障害の軽減においてPEとSSEは同等であった。

※ Effect size (ES) の目安

=0.2: 小さな差 

=0.5: 中程度の差 

=0.8: 大きな差

【結論】

慢性非特異的腰痛症(CNSLBP)に対し、1種類の運動介入が他のものに比べて効果的という強力なエビデンスは見つからなかった。

既存のエビデンスでは、決定的な推奨を行うことはできない。

臨床家は患者と協力し、個人の目標や嗜好を参考にしながら運動選択を行うことになる。

さらに適切なデザインの研究が必要である。

・ピラティスは、慢性腰痛患者の痛みや機能障害の改善には有用ではあるが、健康関連QOLの改善効果は明らかではない、というメタ解析論文

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36833545/

​—

Yu Z, Yin Y, Wang J, Zhang X, Cai H, Peng F. Efficacy of Pilates on Pain, Functional Disorders and Quality of Life in Patients with Chronic Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Environ Res Public Health. 2023 Feb 6;20(4):2850. doi: 10.3390/ijerph20042850. PMID: 36833545; PMCID: PMC9956295.

慢性腰痛患者の痛み、機能障害、QOLに対するピラティスの有効性:系統的レビューとメタ解析

【背景】

腰痛(LBP)は、多くの現代人にとって問題であり、発症率は84%にものぼり年々増加している。

ピラティスが慢性腰痛(CLBP)に有効であることを示唆した系統的レビュー論文は複数あるが、必ずしも質が高くない。

【目的】

慢性腰痛(CLBP)患者の痛み、機能障害、QOLに対するピラティスの有効性を評価する。

【対象者および方法】

PubMedなど複数のデータベースを検索した。CLBPの治療におけるピラティスの無作為化対照試験を、厳格な包含基準および除外基準に基づいて収集し最終的に19のランダム化比較試験(RCT)が残り、メタ解析を実施した。

【結果】

19のランダム化比較試験(RCT)、合計1108人の患者が対象となった。平均疾患期間は、86 日から 11.6 年の範囲。

12件のRCTでは、ピラティス群における治療方法はピラティス単独であった。

7件のRCTでは、ピラティス群における治療方法は、ピラティスに通常ケア、自宅での運動、理学療法治療、標準化された教育プログラム、赤外線照射とバックケア、tendon puncture(腱穿刺)、サスペンショントレーニング法、非ステロイド性抗炎症薬をそれぞれ組み合わせたものであった。

対照群は、治療しない、もしくはピラティス群で行う治療からピラティスを除いたもの。

介入サイクルは平均6.8週間(4週間から13週間の範囲)、トレーニングは平均週3.1回(週1-6回の範囲)。

対照群と比較して、以下のような値が示された。

 mean difference (MD) 平均差、standard mean difference (SMD)標準平均差

・Pain Scale[SMD = -1.31, 95%CI (-1.80, -0.83), p < 0.00001], 

・Oswestry Disability Index (ODI) [MD = -4.35, 95%CI (-5.77, -2.94), p < 0.00001], 

・Roland-Morris Disability Questionnaire (RMDQ) [MD = -2. 26、95%CI (-4.45, -0.08)、p = 0.04]、

・36-item Short-Form (SF-36);健康関連QOLの評価スケール

  身体機能(PF)[MD = 5.09, 95%CI (0.20, 9.99), p = 0.04], 

  日常役割機能(身体)(RP)[MD = 5.02, 95%CI (-1.03, 11.06), p = 0.10], 

  体の痛み(BP)[MD = 8.79, 95%CI (-1.57, 19.16), p = 0. 10]、

  全体的健康感(GH)[MD=8.45、95%CI(-5.61、22.51)、p=0.24]、

  活力(VT)[MD=8.20、95%CI(-2.30、18.71)、p=0.13]、

  社会生活機能(SF)[MD=-1.11、95%CI(-7.70、5.48)、p=0.74]、

  日常役割機能(精神)(RE)[MD=0.86、95%CI(-5。 53, 7.25), p = 0.79]、

  心の健康(MH)[MD = 11.04, 95%CI (-12.51, 34.59), p = 0.36])、

・QBPDS(Qbec Back in Disability Scale)[MD = -5.51, 95%CI (-23.84, 12.81), p = 0.56] 

・座位-到達試験(Sit-and-reach test) [MD = 1.81, 95%CI (-0.25, 3.88), p = 0.09] 

痛みの尺度、障害の尺度(ODI,RMDQ)において、有意差を持ってピラティスは対照群より優れていた。

QBPDS、座位-到達試験は、有意差はなかった(ピラティスが優れている傾向にあるが)。

一方で、QOLの指標となるSF36の8項目においては8項目中、身体機能(PF)を除いた7項目が対照群と有意差を認めなかった。

【結論】

ピラティスは慢性腰痛(CLBP)患者の疼痛緩和と機能障害の改善にプラスの効果をもたらす可能性があるが、QOLの改善は明らかではなかった。

・ポストコロナ時代にスポーツに参加する人たちの葛藤と対処についての韓国の論文

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36923028/

Kim YJ, Shin KL, Kang SW. Variation in leisure sport conflicts and coping strategies depending on participation type and proximity during the COVID-19 pandemic. Front Public Health. 2023 Feb 27;11:1093541. doi: 10.3389/fpubh.2023.1093541. PMID: 36923028; PMCID: PMC10008941.

 COVID-19パンデミック時の参加形態と近接性に応じたレジャースポーツの葛藤と対処戦略の変化 

【背景】

COVID-19により、レジャースポーツ活動への参加は、感染への不安、空間利用の制限、活動抑制などの影響を受けている。ヨガ、ピラティス、ジムでのトレーニング、水泳などの屋内レジャースポーツよりも、ウォーキング、ハイキング、サッカーなどの屋外レジャーイベントへの参加が相対的に増加している。そのような背景の中、レジャースポーツ活動において新たな葛藤が生まれている.

【目的】

様々な種類のレジャースポーツと空間的近接性のレベルにおいて、葛藤要因と対処戦略の違いを分析する。

【対象者および方法】

2020年1月のCOVID-19発生以降、レジャースポーツ活動に参加した20~60歳の韓国人成人(平均年齢39.7歳、男性53%)を対象に調査を実施し、508件の回答を集めて分析を行った。レジャースポーツ参加の種類と空間的近接性によるレジャースポーツの葛藤と対処戦略の差異を検証した。

葛藤(Leisure conflict)に関しVaske/Schroederらの測定法を利用、以下の4タイプに分けられている。(※下段に簡単な説明あり)

(1)偏見による葛藤

(2)競合による葛藤

(3)事前期待による葛藤

(4)マナーを守らないことによる葛藤

対処戦略(Coping strategy)に関し、Schneiderらの対処戦略尺度を改定利用、回避行動と解決行動に関する各3項目を5段階のリッカート尺度で評価した。

※ 空間的な近接性 Spatial proximity

空間的近接度の分類基準は以下。

intimate distance 親密距離(1.2m以内):ピラティス、ヨガ、パーソナルトレーニングなど

personal distance 個人距離(1.2~3.5m):水泳やジムでのトレーニング

social distance社会距離(3.5~7.0m):バドミントンやテニスのようにコートを使用する活動

public distance公共距離(7.5m以上):ジョギング、ハイキング、ゴルフなど

【結果】

インドアスポーツ(ピラティスやヨガを含む)、アウトドアスポーツ双方で全体的に事前期待による葛藤が高めであった。(インドア<アウトドア)

また、ピラティスやヨガ、ジムでのトレーニングなど典型的なインドアスポーツでは偏見による葛藤が高かった。

ピラティスやヨガでは、予約制で活動スペースが限定されるため、競合による葛藤は比較的少なかった。

アウトドアスポーツでは、ジョギングやハイキングが特に事前の期待による葛藤が高く、かつジョギングは偏見による葛藤も高かった。

すべての参加者が回避行動を示したが、インドアスポーツよりもアウトドアスポーツでより頻繁に観察された。

空間的近接性の影響を分析した結果、

親密距離(ヨガピラが属する)は、事前期待による葛藤が比較的高いものの、競合、偏見の葛藤のレベルは比較的低かった。

個人的距離と社会的距離は、公共距離よりも競合による葛藤のレベルが高かった。

【結論】

本研究では、レジャースポーツの参加形態(屋内・屋外)や空間的近接性による葛藤の違いを検証し、参加者の対処法の違いを評価した。主な知見は以下の通りである。

1 社会的距離を保てる場合、アウトドアスポーツではインドアスポーツに比べ参加者が感じる葛藤は少なかった。

2 葛藤を引き起こす要因は、屋内か屋外かによって異なるが、アウトドアスポーツでは、参加者が混雑を経験するほど葛藤が発生する。

3 レジャースポーツの参加者は、葛藤に対処する際、屋内外を問わず、積極的な対処をせず、回避を選択した。

これらの結果から、屋内・屋外を問わず、葛藤=レジャーコンフリクトを解決するためには、回避以外の具体的なプランを検討する必要がある。

※ 参考:レジャーにおける葛藤(Leisure conflict)についての説明

  1. 事前の期待(Prior expectations):レジャー活動に参加する前に、個人は特定の期待を持っています。これは、その活動がどのような経験を提供するか、または自分がどの程度楽しめるかに関する期待です。しかし、実際の経験がこれらの期待と一致しない場合、レジャーコンフリクトが生じることがあります。例えば、静かなキャンプ旅行を期待していたのに、騒々しい隣人がいた場合、コンフリクトが生じる可能性があります。
  2. 競合(Competition):レジャー活動において、参加者間で資源やスペース、時間などが競合する場合、コンフリクトが生じることがあります。例えば、人気のある観光地で写真を撮るスペースをめぐって競争が発生したり、スポーツ施設で使用可能な時間が限られている場合などです。競争が激しくなると、ストレスや不満が生じることがあります。
  3. 偏見(Prejudice):レジャー活動において、参加者間で異なる文化や価値観、意見が存在する場合、偏見が生じることがあります。これは、他の参加者を理解しようとしない態度や、他者への不寛容さが原因となります。偏見がある状況では、コミュニケーションが困難になり、コンフリクトが生じる可能性があります。
  4. エチケットの遵守がない(Not observing etiquette):レジャー活動には、一般的に参加者が守るべきマナーやエチケットが存在します。しかし、これらのルールが守られない場合、他の参加者との間でコンフリクトが生じることがあります。例えば、映画館で大声で話す人や、公共の場でタバコを吸う人などが、他の参加者との間で問題を引き起こすことがあります。

​—

・スマホ依存症の治療法として有望なヨガ、ピラティス

若者のメンタル不調が増加傾向にあることは世界中の問題であり、その一因として、スマートフォン普及、そしてSNSが挙げられます。

子どもや青少年の「問題あるスマートフォン使用」の有病率は、イギリスで10%、台湾で16.7%、スイスで16.9%、韓国で30.9%、インドで31%と報告されています。さらに、アジア6カ国の調査では、スマートフォン所有によるインターネット中毒の有病率は62%と非常に高いことが示されています。

2023年1月に発表された韓国の大学生に対するスマートフォン中毒の悪影響に関する文献の系統的レビューでは、(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36611474/

韓国の大学生がスマートフォン使用による中毒/依存症のリスクに晒されていることが示され、

身体的健康不良、心理的・精神的健康、学業成績不良、先延ばしと衝動性、社会的相互作用(交流)の低下、孤独、自殺が、スマートフォン使用により韓国の大学生の間で最も観察される悪影響であることが示唆されました。

別の論文では、FoMOがスマートフォン中毒の最も強い予測因子であることが示されています。

(https://files.eric.ed.gov/fulltext/EJ1183255.pdf)

“Fear of Missing Out(FoMO)”とは、「ソーシャルネットワークの最新情報を逃すことを恐れながら、個人がソーシャルメディアに多くの時間を費やしている状態を指す」です。

ちなみに”Nomophobia”ノモフォビアという新しい言葉もできています。

Nomophobiaとは、”no“+”mobile”+”phobia“のことで「携帯電話が手元にないことに恐怖心を抱くこと」、つまり「携帯依存症」あるいは「携帯中毒」を意味する言葉です。​

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9480678/

Putchavayala CK, Singh D, Sashidharan RK. A perspective of yoga on smartphone addiction: A narrative review. J Family Med Prim Care. 2022 Jun;11(6):2284-2291. doi: 10.4103/jfmpc.jfmpc_1765_21. Epub 2022 Jun 30. PMID: 36119290; PMCID: PMC9480678.

スマホ依存症にヨガという視点:ナラティブレビュー

スマホ/インターネット中毒は、他の物質中毒と同様に、脳内のドーパミンの増加を引き起こす。

一方で、ヨガは、自己調節と自己制御を促進することによって、生理的、心理社会的、および嗜癖的な行動に対処する有効なツールであることが証明されている。

若年成人の定期的なヨガ実践により、主観的な幸福感を培うことで、ストレスの認知や生活の質に対してポジティブな効果があることが示されている。

学校でのヨガの定期的な練習は、不快な気分、感情のコントロール、自尊心にポジティブな影響を与えるという経験的な証拠が報告されている。

ヨガは、依存症やその他の精神疾患に対する有望な治療法であると思われる。生命とつながるその能力は、私たちの心と体の解毒detoxificationを助け、感情の調節を助け、それによって幸福感を向上させる。これは、依存症の渇望、強迫行為、耐性、再発の状態に対処するための重要な側面である。その結果、ヨガや瞑想を日常生活に取り入れることで、スマートフォン依存症に伴う不適応行動の症状を調整する助けとなることが期待できる。

・ピラティスやヨガにおいて重要な要素である呼吸の内、ブレスワーク(主にゆっくりした呼吸)がストレスやメンタル不調に有効(2023)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9828383/

Fincham GW, Strauss C, Montero-Marin J, Cavanagh K. Effect of breathwork on stress and mental health: A meta-analysis of randomised-controlled trials. Sci Rep. 2023 Jan 9;13(1):432. doi: 10.1038/s41598-022-27247-y. PMID: 36624160; PMCID: PMC9828383.

ストレスとメンタルヘルスに対する呼吸法の効果:無作為化対照試験のメタ解析

【背景】

近年、呼吸を意図的にコントロールすること(ブレスワーク)に関心が高まっている。

呼吸法はメンタルヘルスを改善する治療的可能性を持っている。

特に、ゆっくりとしたペースで行う呼吸法が提案されており、ポリヴェーガル理論や内受容感覚interoception、enteroception、中枢神経系への影響、自律神経系(ANS)の調節による心拍変動(HRV)の増加、副交感神経活動の増加などが、「呼吸法」を支える心理生理学的作用機序として提唱されている。

世界的にメンタルヘルスが問題視されている一方で、心理療法への障壁が極めて高い。簡単にアクセスでき、拡張性のある介入を必要とし、呼吸法などのマニュアル化された実践は、この目的に合致しているかもしれない。

【目的】

呼吸法介入が非呼吸法対照と比較して、自己報告/主観的ストレスの低レベルと関連するかどうか、またどの程度関連するかを調べることにより、呼吸法の有効性を評価する。

【対象者および方法、結果】

呼吸法の潜在的な効果や有効性を評価するために、心理学的尺度を報告する無作為化比較試験(RCT)のみに焦点を当てた。

各種データベースを2022年2月まで検索し、1325件の結果を特定し、条件に合致した26件を対象とした。 ブレスワークが介入の 50% 以上を占めた研究が対象である。主要アウトカムである自己報告/主観的ストレスについては、12の無作為化対照試験(k=12)が含まれ、合計で785名の成人参加者が含まれていた。

研究期間は1日~7カ月。

介入方法は様々だったが、20件は遅い呼吸法、6件は速い呼吸法に主眼を置いていた。

15件は対面式、9件は遠隔またはオンライン、2件は両者の組み合わせ。

介入/自宅実践セッションの最小推定総時間は1~6,810分、最小推定総回数は1~173回であった。

介入/自宅実践セッションの長さは異なっていたが、頻度は週に2~21.5回。

主要アウトカムにおいては、ランダム効果分析により、

小〜中程度の効果を示し、呼吸法が対照条件よりも低いレベルのストレスと関連していたことが示された。

(g = – 0.35 , z = 3.32, p = 0.0009)

副次的アウトカムについてのメタアナリシスにおいては、

不安および抑うつ症状のでは、両者とも小〜中程度の有意な効果を示した

(g = – 0.32, p < 0.0001, g = – 0.40, p < 0.0001)

このメタ分析では、ブレスワークが、ブレスワークを行わない対照条件と比較して、自己申告/主観的ストレス、不安、うつ病に対して、小~中程度の有意な効果があった。バイアス、介入方法のバラつきが問題点である。

【結論】

呼吸法はストレスやメンタルヘルスを改善するために有効である可能性がある。

さらに質の高い研究が必要である。

※ 群間効果量(ES);ESが0.2であれば小、0.5であれば中、0.8であれば大と分類される

​—

・ピラティスのエクササイズであるLeg Pull Frontは、特定の筋肉の活性化、不要な骨盤回転の防止に繋がる

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36611520/

Jung EJ, Oh JS. The Effects of Abdominal Hollowing and Bracing Maneuvers on Trunk Muscle Activity and Pelvic Rotation Angle during Leg Pull Front Pilates Exercise. Healthcare (Basel). 2022 Dec 26;11(1):60. doi: 10.3390/healthcare11010060. PMID: 36611520; PMCID: PMC9818814.

ピラティスのLeg Pull FrontにおけるAbdominal HollowingとAbdominal Bracingが体幹筋活動および骨盤回転角度に与える影響

【背景】

ピラティスでは、体幹の筋肉を安定させるエクササイズを行う。レッグプルフロント(LPF)はピラティスの代表的なマットエクササイズの一つである。

LPF は、股関節伸展中に望ましくない(制御されていない)骨盤の動きを引き起こす可能性がある。

制御されていない骨盤の動きは、腰椎に過度の機械的負荷を与える可能性がある。

腹部ホローイングAbdominal Hollowing(AH)と腹部ブレーシングAbdominal Bracing(AB)は、体幹部を安定させ、運動中の不要な骨盤の動きを防ぐために推奨されている。

Abdominal Hollowing(AH)では、へそを脊柱方向、内側に引き込むことによって腹横筋/内腹斜筋の選択的収縮を促す。これは腰部の過度の前弯と骨盤の前傾を防ぐのに役立つ。

Abdominal Bracing(AB)では、体幹の全ての筋肉の等尺性共収縮を利用して腰椎を固定する 。これにより、突然のわずかな動きに対する椎体の安定性が向上し、腰椎の動きが抑えられる.

我々の知る限り、LPF時の体幹の安定性に対するAHやABの効果を調べた研究はない。さらに、LPF時の骨盤回転角に対するAHとABの効果も研究されていない。

【目的】

本研究では、LPF時の体幹筋の筋電図(EMG)活動および骨盤回転角度に及ぼすAHおよびABの影響を調べることを目的とした。

【方法】

合計20名の健康なボランティアが研究に参加した。以下の3群にランダムにわけ、LPF運動を行った。

LPF-AH:LPF中にAbdominal Hollowing(AH)を行う

LPF-AB:LPF中にAbdominal Bracing(AB)を行う

LPF-WC:LPF中にAHもABも行わない (WC=without any condition)

体幹の筋活動はelectromyography (EMG) で、骨盤の回転はSmart KEMAで測定した。

【結果】

LPF-AHでは腹横筋・内腹斜筋および右外腹斜筋の活動が他の条件と比較して最も高くなった。多裂筋活動は、LPF-AHとLPF-ABでLPF-WCに比べ有意に大きかった。また、骨盤回転角はLPF-ABで有意に小さくなった。

【結論】

LPF中のAbdominal Hollowing(AH)は腹横筋・内腹斜筋の選択的な活性化に適している。

LPF中のAbdominal Bracing(AB)は不要な骨盤回転の防止に推奨される。

・成人のADHD(注意欠陥/多動性障害)にピラティスが有効

https://link.springer.com/article/10.1007/s12144-022-03216-6

Kouhbanani, S.S., Zarenezhad, S. & Arabi, S.M. Mind-body exercise affects attention switching and sustained attention in female adults with Attention Deficit/Hyperactivity Disorder: A randomized, controlled trial with 6-month follow-up. Curr Psychol (2022). https://doi.org/10.1007/s12144-022-03216-6

注意欠陥/多動性障害を持つ成人女性において、心身運動(Mind-body exercise)は注意の切り替えと持続的な注意に影響を与える:6ヶ月間フォローアップの無作為化対照試験

【背景】

成人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)の認知機能に対するピラティスの影響を調査した研究はほとんどない。

【目的】

本研究では、ADHDの成人において、ピラティストレーニングが注意の切り替え(attention switching)と持続的注意( sustained attention)に及ぼす影響を評価することを目的とした。

【対象者および方法】

対象は、ADHDの成人(20〜50歳)52名。24週間のピラティストレーニング群(n=25)と対照群(n=27)に無作為に分けられた。6ヶ月間フォローアップした。

【結果】

治療群(ピラティス群)は、介入後およびフォローアップにおいて、持続的注意の有意な改善を示し、特に省略エラー(omission errors)、コミッションエラー(commission errors)、反応時間(reaction time)の面で改善した(p < 0.05)。

※ 行為自体がなされなかったエラーを omission,正しくない行為がなされた場合をcommission と呼んでいる。

さらに、注意の切り替え( attention switching)は、介入後、perseverative errors、non-perseverative errors、total errors(p<0.05)において、有意に改善されることが示された。

※ perseverative 〔ある言葉・思考・行動などが〕執拗に繰り返される、固執性の、保続的な

【結論】

ピラティスのトレーニングがADHDの成人の注意の問題にポジティブな影響を与える。

​—

ピラティスは、様々な健康状態の高齢者において、身体的心理的に好影響を与える運動アプローチである

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34759879/

Meikis L, Wicker P, Donath L. Effects of Pilates Training on Physiological and Psychological Health Parameters in Healthy Older Adults and in Older Adults With Clinical Conditions Over 55 Years: A Meta-Analytical Review. Front Neurol. 2021 Oct 25;12:724218. doi: 10.3389/fneur.2021.724218. PMID: 34759879; PMCID: PMC8574969.

健康な高齢者と55歳以上の医学的問題のある高齢者におけるピラティストレーニングの生理的・心理的健康パラメータへの効果:メタ解析レビュー。

【背景】

高齢化が進み、社会的、経済的、健康的な問題が深刻化している。老化プロセスの主な特徴は、筋肉量や体力の低下、有酸素運動能力の低下、脳の容積や機能の低下、骨密度の低下など、身体的および認知的機能の低下である。身体的・認知的機能の低下は、恐怖、無気力、自信の低下、自律性の喪失など、さらなる心理的変化をきたすことが多い。

高齢者の生理的・心理的健康パラメータに対するピラティスの全体的な(臨床的)有効性を検討したレビューは不足している。

【目的】

健康な高齢者と55歳以上の医学的問題のある高齢者を対象に,ピラティスの介入が生理学的および心理学的な健康パラメータに与える影響を比較すること。

【対象者および方法】

各種データベースにて、55歳以上の高齢者を対象に,ピラティスを介入対象として生理学的・心理学的な健康パラメータの改善を目的とした無作為化比較対照試験を対象として検索。条件に合致する51件の研究(合計2,485人(平均年齢:66.5±4.9歳))を対象とした。

これらの試験の対象者は、健康高齢者の場合、あるいは、何らかの医学的問題のある高齢者であり、医学的問題のあるには、転倒のリスク、慢性腰痛、チクングニア熱、前立腺切除後の尿失禁の男性、めまい患者、膝関節全置換術、骨粗鬆症の女性、脳卒中後、糖尿病、パーキンソン病ス、変形性膝関節症、乳がんなどが含まれた。

これらの試験は、何らかの運動をした群を比較対象としたもの、運動をしていない群を比較対象としたものに分けられた。

ピラティスの介入群(Pilates interventions =PI)

運動ベースの介入を受けた群(active control = AC)

運動ベースの介入を受けなかった群(inactive control = IC)

ピラティスの介入の最も典型的な期間は8週間または12週間(51研究中29研究)。

27の研究では週に2回のトレーニングセッションが実施され、23の研究では週に3回のセッションが実施。

1セッションの時間は30分から66分の間、半数以上の研究では60分を1回のトレーニングセッションの時間としていた(n = 39)。

【結果】

PIは、

生理的健康指標(筋力、バランス、持久力、柔軟性、歩行、身体機能)について、健康高齢者、医学的問題のある高齢者ともに、ICと比較して中等度の効果(SMD:0.55、0.68)が、ACと比較して小~中等度の効果(SMD:0.27、0.50)が認められた(p=0.04、p=0.01)。

また、心理的健康指標(QOL、抑うつ、睡眠の質、転倒恐怖、疼痛、健康感)については、ICと比較して、いずれの条件の高齢者においても中程度から大きな効果(SMD:0.62、0.83)が認められた(p<0.001、p<0.001)。

※ SMD(standardized mean differences)の目安

0-0.19=無視できる効果

0.20-0.49=小さな効果

0.50-0.79=中程度の効果

0.80=大きな効果

【結論】

ピラティスの介入は、健康状態にかかわらず、高齢者の生理的および心理的な健康パラメータにポジティブな効果をもたらす。

ピラティスは、様々な健康状態の高齢者にとって安全で適応性のある有望な運動アプローチであると思われる。

・ピラティスを行うことによるポジティブな身体イメージが、外見不安を軽減させ、心理的ウェルビーイング向上に繋がる

https://www.pjmhsonline.com/index.php/pjmhs/article/view/260/257

The  Effect  of  Social  Appearance  Anxiety  on  Psychological  Well-Being: A Study on Women Doing Regular Pilates Activities

DOI: https://doi.org/10.53350/pjmhs22162797

社会的外見不安が心理的幸福に及ぼす影響:ピラティスを定期的に行っている女性に関する研究

【背景】

定期的な身体活動は、身体的な健康効果だけでなく心理的な幸福感にも効果がある

社会的外見不安とは、自分の外見が他人から評価されることに関して抱く不安や緊張と定義される。

「自分の外見が原因で否定的な評価を受けることへの恐怖」ともいえる。

健康的な生活習慣は社会的外見の認知に影響し、身体活動もこの認知の形成に重要な役割を果たす

ピラティスを行うことにおける、社会的外見不安と心理的幸福の関係を論じた研究はない。

【目的】

ピラティスを定期的に行っている女性の心理的幸福感に対する社会的外見不安の影響を検討する

【対象者および方法】

横断研究。対象は、トルコの複数の施設にてピラティスを行い、この研究に自発的参加の意思がある女性382名(65%が36-39歳、69.%は既婚)。

運動頻度は週3日以上が80%、1日30分未満が42%、30-60分が41%。

データは、社会的外見不安尺度(Hart)と心理的幸福尺度(Diener)の質問票を利用し、電子媒体を通じて収集。

【結果】

社会的外見不安と心理的幸福感の間には、有意かつ負の関係があると判断された(r = -.250; p < 0.01)。

階層的回帰分析の結果,社会的外見不安は心理的幸福に有意かつ負の影響を及ぼし(β= -.253; p<0.001),また57%の説明力を持つことが示された。

【結論】

ピラティスは社会的外見不安を軽減し、心理的幸福感を高めると考えられる。

ピラティスを定期的に行っている女性は、ポジティブな身体イメージを身につけると、自分自身に安らぎを覚え、心理的幸福感が高まると言える。

・ピラティスは未就学児にも姿勢や体力のメリットをもたらす

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1360859222000511

Nazan Ozturk, Fatma Unver,

The effects of pilates on posture and physical fitness parameters in 5–6 years old children: A non-randomized controlled study,

Journal of Bodywork and Movement Therapies,2022,,ISSN 1360-8592,https://doi.org/10.1016/j.jbmt.2022.03.009.

5-6歳児におけるピラティスの姿勢および体力パラメータへの影響:非ランダム化比較研究

【背景】

運動不足は公衆衛生上の問題である。身体活動はどの年齢でも有益だが、小児期においても健康的な発育と成長のためにさらに重要である。

【目的】

5〜6歳の健康な子供たちの姿勢と体力パラメーターに対するピラティスの影響を調査すること

【対象者および方法】

非ランダム化比較試験。4つの幼稚園を2つのグループに分けた。5~6歳の66名の園児をピラティス群(n=31)と対照群(n=35)に割り付けた。

ピラティス群には週2回、10週間のピラティスプログラムが行われた。

対照群は日常生活を継続した。

姿勢評価はNew York Posture Rating Chart test、体力はEurofit test batteryで評価された。

子どもたちは、プログラムへの参加について盲検化されていた(割り当てを知らされていない)。

群間比較にはMann-Whitney U検定、群内比較にはWilcoxon Signed-Rank検定が用いられた。

【結果】

群内比較により、New York Posture Rating Chart test(p<0.001)、フラミンゴバランス、Sit and Reach、立ち幅跳び、30秒腹筋、屈伸腕立て伏せ、20mシャトルランテストスコアに統計的に有意な改善が認められた(p<0.05)。

→ 本文にアクセスできていないので、群間比較に関してはわかりません。

【結論】

ピラティスは、未就学児の体力パラメータと姿勢評価に対してポジティブな効果をもたらす。本研究は、ピラティスが5~6歳児におけるお遊び的(エンターテインメント)な代替運動となりうることを示唆するものである。

・ピラティスには、高齢者に包括的なメリットがある

https://www.mdpi.com/2254-9625/12/3/18/html

Pereira, M.J.; Mendes, R.; Mendes, R.S.; Martins, F.; Gomes, R.; Gama, J.; Dias, G.; Castro, M.A. Benefits of Pilates in the Elderly Population: A Systematic Review and Meta-Analysis. Eur. J. Investig. Health Psychol. Educ. 202212, 236-268. https://doi.org/10.3390/ejihpe12030018

高齢者集団におけるピラティスの効果:系統的レビューとメタ解析

【背景】

世界的に60歳以上の高齢者は年率3%で増加しており、若年層よりはるかに多い。2050年には、高齢者が人口の22%を占めるようになると予測されている。80歳以上の高齢者は、2050年には3倍の4億3400万人に達する。

高齢者に対するピラティスの介入の利点を分析したシステマティックレビューは、過去5年間で3件しか実施されていない。したがって、ピラティスはHealthy Ageing (HA)を促進する効果的な方法なのか、という問いを更新することが適切である

【目的】

このシステマティックレビューの目的は、高齢者(60歳以上)におけるピラティスの効果、ヘルシーエイジング(HA)への寄与を評価することである。

【対象者および方法】

PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analysis)を用いて、本テーマの選択、収集、分析を行った。

【結果】

各種データベースより条件に合致した30件の研究を抽出、解析対象とした。

分析した研究(n = 30)の主な結果は、動的バランス、筋力、可動性、機能的能力、転倒リスク軽減、精神的・心理的健康において、介入群と対照群の間に有意差を認め、ピラティスが高齢者の健康に有益である可能性が示された。

メタアナリシスでは、動的バランス(平均差(MD)=-0.0、95%CI [-0.71, -0.50]; I2: 0%) と有酸素能力・有酸素抵抗((MD)=38.29、95%CI [6.82, 69.77]; I2: 0%) において平均値間に統計的有意差があることが示された。

【結論】

ピラティスの有効性は、HAの様々な領域で示されており、床にマットを敷くだけで、大多数の人にとって手頃で安全であることが証明されたと結論づけられる。

今後の研究では、高齢者集団におけるピラティスの介入による費用と効果の関係の分析に焦点を当て、どのように医療費を最小化できるかをより理解し、多角的かつ一般的なHAに貢献することが望まれる。ピラティスは、高齢者集団に関わる臨床医、セラピスト、医療専門家にとって実用的なものである。

このコンテンツはリンクのプレビューです。www.mdpi.com

・妊婦には在宅での遠隔ピラティスが有効

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35052289/

Hyun AH, Cho JY, Koo JH. Effect of Home-Based Tele-Pilates Intervention on Pregnant Women: A Pilot Study. Healthcare (Basel). 2022 Jan 8;10(1):125. doi: 10.3390/healthcare10010125. PMID: 35052289.

妊婦に対する在宅テレピラティスの効果:パイロットスタディ

【背景】

ピラティスは、体幹の筋肉を鍛え、股関節を安定させる効果があり、妊娠中の骨盤痛や腰痛を緩和する効果がある。しかし、現在COVID-19パンデミックもあり、妊婦に適した身体運動に関する具体的なガイドラインはない。

【目的】

米国産科婦人科学会(ACOG)が提唱する運動基準を家庭用テレピラティスエクササイズ(HTPE;home-based tele-Pilates exercise)に適用し、妊婦の心身の健康に与える影響を明らかにすることを目的とした。

【対象者および方法】

妊娠20-24週目の45歳以下の妊婦

合計18名の被験者を対照群(CON、n=9)とピラティス群(PE、n=9)に無作為に割り付けた。

8週間のHTPE(50分/日、2日/週)を行った。

2022-02-21 7.44.39

運動強度はACOGによるRPE(Rating of perceived exertion)10〜13(最大心拍数の50〜60%)とBorgの尺度で管理された。

指導者が被験者全員の動作や痛みの状態を観察しやすいように、参加人数を10名未満に制限した。また、彼らの誤った姿勢を修正し、RPEを監視することで適切な強度を維持した。さらに、被験者はそれぞれのスペースに設置したテレビやタブレットで指導者との距離を調整し、動作の前後で姿勢のフィードバックや不快感の程度をリアルタイムに会話することで、相互の運動効果を最大限に高めることができた。

運動参加中に不快感を示し脱落した被験者4名(各群n=2)を除外し、

・CON(n=7)、34.1±3.8歳、63.5±3.5kg、

・PE(n=7)、31.7±3.0歳、67.4±5.1kg

を最終的な対象とした。

HTPEは、痛みや体力レベルに応じて、3週間ごとにプログラムを調整して実施した。HTPEの前後で、

・身体組成

・股関節の筋肉(右股関節屈曲(RHF)、右股関節外転(RHA)、左股関節屈曲(LHF)、左股関節外転(LHA)に関与する股関節の筋肉)

・骨盤の傾き

・Oswestry Disability Index(ODI;腰痛患者の症状のレベルの評価)

・ピッツバーグ睡眠指数(PSQI;Pittsburgh Sleep Quality Index)

を測定した。

【結果】

HTPE後、体脂肪率と体格指数は有意に減少したが、PE群では体脂肪量は変化しなかった(p<0.05)。

PE群では、CON群に比べ、左右の股関節屈曲と股関節外転の筋力が増加した(p<0.01)。

ODIとPSQIはPE群で有意に低下した(p<0.05)。

【結論】

8週間のHTPEプログラムは、体脂肪の代謝を抑え、股関節の筋肉を強化し、妊娠による腰痛と不眠を緩和する妊婦に有効な運動であるといえる。

・骨密度が低いなど骨折リスクの高い人に対するピラティスの効果

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35080990/

McLaughlin EC, Bartley J, Ashe MC, Butt D, Chilibeck PD, Wark J, Thabane L, Stapleton J, Giangregorio L. The Effects of Pilates on Health-related Outcomes in Individuals with Increased Risk of Fracture: A Systematic Review. Appl Physiol Nutr Metab. 2022 Jan 26. doi: 10.1139/apnm-2021-0462. Epub ahead of print. PMID: 35080990.

骨折のリスクが高い人の健康関連アウトカムに対するピラティスの効果:系統的レビュー

【目的】

この系統的レビューでは,カナダにおける骨粗鬆症と骨折予防の管理に関する 2021 年版臨床実践ガイドラインに情報を提供するため,骨折リスクが高い人の健康関連アウトカムに対するピラティスの効果を検討した.

【対象者および方法】

2020 年 12 月までに 7 つの電子データベースを検索した。低骨密度,脆弱性骨折の既往,または脆弱性骨折の中高リスクを有する50歳以上の男性および閉経後女性におけるピラティスの研究を対象とした.2名のレビュアーが独立して研究をスクリーニングし、バイアスリスク評価を行った。

【結果】

7286件の記録と504件の全文記事のうち、条件に合致する5件の研究を抽出、143名の参加者(99%が女性)を対象とした。データはメタ分析には不十分であった。

ピラティスが身体機能および健康関連QOLを向上させるという確実性の低いエビデンスが存在する。

転倒と骨密度に対するピラティスの効果は不明である。

死亡率、骨折、または有害事象に対するピラティスの効果については、エビデンスが得られなかった。

【結論】

ピラティスは、骨粗鬆症の女性の身体機能とQOLを改善する可能性がある。

ピラティスの骨密度、転倒、骨折、有害事象に対する効果を示すエビデンスは限られている。

・ピラティスエクササイズは、変形性膝関節症患者の治療に効果的

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35099429/

Saleem N, Zahid S, Mahmood T, Ahmed N, Maqsood U, Chaudhary MA. Effect of Pilates based exercises on symptomatic knee osteoarthritis: A Randomized Controlled Trial. J Pak Med Assoc. 2022 Jan;72(1):8-12. doi: 10.47391/JPMA.495. PMID: 35099429.

症候性変形性膝関節症に対するピラティスに基づくエクササイズの効果:無作為化比較試験

【背景】

膝関節は、身体の中で最も複雑な関節と言われ、単独で大きな動きを制御し、身体に安定性を与えています。加齢に伴い、変形性膝関節症(OA)やその他の退行性変化などの病態が最も起こりやすい部位です。変形性関節症は、女性に多く見られる関節の摩耗と損傷の病態です。変形性膝関節症(KOA)は、65歳以上の85%が罹患しており、関節の靭帯が変性して動く病態であるため、最も注目されています。

ピラティスと等尺性運動は、どちらもKOAの治療に使用され、有効性が示されているが比較有効性はよく知られていない。

【目的】

変形性膝関節症の女性を対象に、ピラティスが痛み、膝関節可動域、機能障害に及ぼす影響を明らかにすること。

【対象者および方法】

二重盲検無作為化対照試験。2018年4月から9月、パキスタンの国立整形外科病院の変形性膝関節症の女性患者を対象とした。

被験者は、対照群A(等尺性運動)と介入群B(ピラティス)に無作為化に割り付けられた。

両群とも1時間のセッション※ を週3回、8週間にわたって受けた。

両群はベースライン時と8週目の終わりに、それぞれ痛みと機能性のレベルについて、numeric pain rating scaleとWestern Ontario and McMaster Universities osteoarthritis index(WOMAC変形性関節症指数)を用いて評価された。データはSPSS 23を使用して分析した。

【結果】

44人の患者が、2つのグループA、Bにそれぞれ22人(50%)づつ割り付けられた。平均年齢は57.60±6.34歳、B群では55.65±7.28歳、平均肥満度は25.812±4.16、A群では26.93±4.4であり、両群とも20名ずつ40名(91%)が研究を完了した。

両群とも介入後、疼痛、可動域、身体機能(WOMAC)において有意な改善を示した(p<0.05)。

B群はA群に比べ、疼痛、可動域、身体機能(WOMAC)で有意な改善を示した(p<0.05)。

【結論】

ピラティスエクササイズは、変形性膝関節症患者の治療においてより効果的であった。

※ 運動セッションの概要

グループAは、7~10分間のホットパック治療を行った。経皮的電気神経刺激(TENS)を10分間行い、大腿四頭筋、強化運動、ハムストリングスのストレッチングを8週間行った。

B群は、ホットパック治療を7~10分間行った。TENS10分と大腿四頭筋強化・ハムストリングスストレッチエクササイズにピラティスエクササイズを加えた。各セッションは、10分のウォームアップ、40分のエクササイズ、10分のクーリングオフで構成された。

グループBのエクササイズは、姿勢訓練、リラクゼーション、ストレッチ、バランス、呼吸、強度のエクササイズが含まれた。大腿四頭筋と臀部の強化エクササイズには、ブリッジング、ボールを使ったスクワット、ラテラルバンドウォークが含まれた。 柔軟性を高めるためのストレッチ、股関節屈筋、大臀筋、座位ハムストリング、大腿四頭筋のストレッチが行われた。

1週目は、hundredを5回、2セット行った。

2週目と3週目には、さらにone-leg stretchとdouble-leg stretchを6回、2セット行った。

4週目には、clamsを7回繰り返した。

5週目と6週目には、one-leg kickを2セット追加した。

7週目にはsidekicks8回を追加した。

8 週目にはone-leg circleを 10 回追加した

・マットピラティスは、高血圧女性の血圧を低下させる

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35084038/

da Silva Almeida I, Souza Andrade L, Sousa AMM, Junior GC, Turri-Silva N, Cunha Nascimento D, Mota YL, Durigan JLQ. The Effect of Mat Pilates Training Combined with Aerobic Exercise Versus Mat Pilates Training Alone on Blood Pressure in Women with Hypertension: A Randomized Controlled Trial. Phys Ther. 2022 Jan 27:pzab258. doi: 10.1093/ptj/pzab258. Epub ahead of print. PMID: 35084038.

高血圧の女性の血圧に対するマットピラティスと有酸素運動の併用とマットピラティス単独の効果:無作為化対照試験

【目的】

高血圧の女性において、マットピラティス(MP)とMP+有酸素運動(aerobic exercise;AE)の外来血圧(BP)に対する効果を、介入しない場合と比較して明らかにすること。

【対象者および方法】

3群並行群間無作為化臨床試験。30~59歳の高血圧の女性60人が対象。

参加者は

・マットピラティスのみ(MP群)

・マットピラティスとトレッドミルでのAEを交互に行う(MP+AE群)

・エクササイズを行わない対照群(CG)

の3群に無作為に割り付けられた。介入期間は16週間。主要アウトカムは、24時間、覚醒時、睡眠時に評価した外来血圧に対する介入の効果。

【結果】

2ウェイ分散分析では、24時間の分析期間において、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数の群間比較の統計的有意差はみられなかった。

・収縮期血圧(CG対MP=3.3 [95% CI = -7.1 to 13.8]; MP対MP+AE=0.7 [95% CI = -4 to 5.4]; CG対MP+AE=4.0 [95% CI = -5.2 to 13.4] )

・拡張期血圧(CG 対MP=2.2 [95% CI = -5.6 to 10.0]; MP対MP+AE = 1.1 [95% CI = -4.3 to 6.5]; CG 対 MP+AE = 3.3 [95% CI = -3.8 to 10.4])

・心拍数(CG対MP=3.4[95%CI=-2to8.8],MP対MP+AE=2.0[95%CI=-3.4 to 7.5],CG対MP+AE=5.4[95%CI=-0.8 1o 11.8])

覚醒時および睡眠時の解析でも同様の挙動を示し、統計的に有意な群間差は認められなかった。

24 時間の解析期間中の収縮期血圧の低下幅は、MP 群で-3mmHg、MP+AE 群で-5.48mmHg であり、反応性については群間差は認められなかった。

【結論】

6週間のマットピラティスは、高血圧女性の外来血圧を低下させる。

マットピラティス+有酸素運動は、マットピラティスと同様の血圧低下を示した。

降圧薬を使用している高血圧女性にとって、これらは代替的な補助治療となる可能性を示唆している。

・ピラティスでよく用いられるメニューのうち、「dead bug」が腹横筋活性化に効果的である

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10443248/

Tsartsapakis I, Gerou M, Zafeiroudi A, Kellis E. Transversus Abdominis Ultrasound Thickness during Popular Trunk-Pilates Exercises in Young and Middle-Aged Women. J Funct Morphol Kinesiol. 2023 Aug 4;8(3):110. doi: 10.3390/jfmk8030110. PMID: 37606405; PMCID: PMC10443248.

若年および中年女性における一般的なトランク・ピラティス・エクササイズ中の超音波測定による腹横筋の厚さ

【背景】

腹横筋 (TrA; transversus abdominis)は、機能的可動性と腰椎の安定性に寄与する体幹筋である。

TrAは、多くの人、特に腰痛や体幹の不安定性を持つ人において、十分に活用されていなかったり、機能不全に陥っていたりすることが多い。したがって、TrAをトレーニングし、様々な動作中の活性化を改善することは、体幹機能を高め、痛みを軽減するために重要である。

【目的】

本研究の目的は、ピラティス・プログラムでよく用いられる5つのエクササイズ (basic position, hundred, hip roll (or bridge), side plank, dead bug)におけるTrAの厚さを比較し、TrAを最も活性化させるエクササイズを特定すること。

また、若年層と中年層の参加者の間でTrAの厚さに違いがあるかどうかを検討する。

【対象者および方法】

ピラティス経験3年以上の健康な女性44名を、若年層(25~35歳)と中年層(36~55歳)の2群に分けた。

参加者が5つのピラティス・エクササイズ(ベーシック・ポジション、ハンドレッド、ヒップ・ロール、サイド・プランク、デッド・バグ)を行っている間、TrAの厚さを超音波で評価した。

TrA測定は、アロカ社製プロサウンドSSD-3500SV USシステム(アロカ社、日本)を用いた。トランスデューサヘッドの長さは6cm、周波数は13MHZ。

【結果】

反復測定分散分析の結果、デッドバグエクササイズは、他のエクササイズよりもTrAの厚みを有意に増加させた(安静時に対して)(p<0.05)。

デッドバグエクササイズでTrAの活性化が最も高く、次いでサイドプランク、ヒップロール、ハンドレッド、ベーシックポジションエクササイズであった。

また、若年群は中年群よりもTrA全体の厚みが有意に高かった(p<0.05)。

(安静時の TrA の厚さに差がないが、運動時の厚さに相違がある)

【結論】

デッドバグ・エクササイズが、テストしたピラティス・エクササイズの中で、TrAの活性化を高めるのに最も効果的であることを示唆された。

ベーシックポジションとハンドレッドのエクササイズは、ヒップロール、サイドプランク、デッドバグなどの難易度の高いエクササイズを行う前のウォームアップエクササイズとして用いることができる。

エクササイズの順序は、若い女性でも中高年の女性でも同様である。

ピラティスは月経困難症に有益な効果をもたらす

https://www.mdpi.com/2227-9032/11/14/2076

Song BH, Kim J. Effects of Pilates on Pain, Physical Function, Sleep Quality, and Psychological Factors in Young Women with Dysmenorrhea: A Preliminary Randomized Controlled Study. Healthcare (Basel). 2023 Jul 20;11(14):2076. doi: 10.3390/healthcare11142076. PMID: 37510517; PMCID: PMC10379070.

月経困難症の若年女性における疼痛、身体機能、睡眠の質、心理的要因に対するピラティスの効果: 予備的ランダム化比較研究

【背景】

月経困難症に対するピラティスの効果について行われた研究は比較的少なく、また月経困難症に対するピラティスの治療メカニズムは現時点では不明である。

【目的】

ピラティスが月経痛や症状、月経前症候群を緩和するかどうかを調査し、さらに股関節の筋力と柔軟性、睡眠の質、不安、抑うつ、ストレスなどの心理的危険因子への影響を評価することで、ピラティスが月経困難症にどのような影響を与えるかを検討すること。

【対象者および方法】

原発性月経困難症の若い女性30人を、ピラティス群(PG; n = 15、平均33.9歳)と待機リスト対照群(CG; n = 15、平均31.3歳)に無作為に割り付けた。ピラティスは週2回、12週間行った。(メニューに関しては下段参照)

月経痛と症状は、それぞれ視覚的アナログスケール(VAS;visual analogue scale)とコックス月経症状スケール(CMSS;Cox menstrual symptom scale)で測定した。

月経前症候群は、月経前症状スクリーニングツール(PSST;premenstrual symptoms screening tool)を用いて評価した。

さらに、背中の柔軟性、股関節の筋力(hip muscle strength)、睡眠時間と睡眠の質、知覚ストレス、状態特性不安(state-trait anxiety,)、抑うつが評価された。

それらの測定は、ベースライン時と12週間後に行われた。

【結果】

VAS、CMSSの重症度と頻度、PSSTの症状および機能障害は、CGと比較してPGで減少し(p<0.001またはp<0.01)、大きなエフェクトサイズが認められた。

背中の柔軟性と股関節屈筋、股関節伸展筋、股関節外転筋の筋力は、CGと比較してPGで有意に増加し(すべてp<0.01)、大きなエフェクトサイズが認められた。

睡眠の質(p<0.01)とストレス(p<0.05)は、PGで改善した。

睡眠時間、不安、抑うつはどちらの群でも変わらなかった。

【結論】

本研究では、月経困難症の女性に12週間のピラティス介入を行ったところ、無治療の場合と比較して、月経痛と症状、月経前症状が有意に軽減し、背中の柔軟性、股関節の筋力、睡眠の質も改善したことを示した。

これらの所見は、ピラティスが月経困難症に有益な効果をもたらす可能性を示唆しており、股関節の筋機能と睡眠の質の改善を介する可能性がある。

これらを総合すると、ピラティスは月経困難症の管理のための補完療法として有望である。

ピラティスに呼吸訓練を組み合わせると健康増進に繋がる(自律神経、呼吸機能、体組成)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37434197/

Adıgüzel S, Aras D, Gülü M, Aldhahi MI, Alqahtani AS, Al-Mhanna SB. Comparative effectiveness of 10-week equipment-based pilates and diaphragmatic breathing exercise on heart rate variability and pulmonary function in young adult healthy women with normal BMI – a quasi-experimental study. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2023 Jul 11;15(1):82. doi: 10.1186/s13102-023-00693-5. PMID: 37434197; PMCID: PMC10337178.

10週間の器具を用いたピラティスと横隔膜呼吸エクササイズの、正常BMIの若年成人健康女性の心拍変動と肺機能に対する比較効果-準実験的研究

【背景】

ピラティスが、多くの健康パラメータに好影響を及ぼすことが示されている。

一方で、効率的な肺機能は健康の重要な決定要因であり、身体運動と呼吸運動の組み合わせが肺機能に対してより大きな効果をもたらしたという研究(J Back Musculoskelet Rehabil. 2018;31(2):405–9.)がある。

呼吸トレーニングに加えてピラティスを行う方がピラティスのみを行うよりも効果があるする研究( Clin (Sao Paulo) 2018;73:e356.)もある。

【目的】

BMIが正常な若年成人の健康な女性を対象に、10週間の器具を用いたピラティス、ゆっくり呼吸をコントロールするエクササイズ、およびその両方を組み合わせたエクササイズが、心拍変動(HRV)、肺機能、体組成(BC)に及ぼす影響を調査することである。

【対象者および方法】

40名の健康な女性参加者(平均年齢31.42±6.4歳、体重59.4±8.83kg、身長163.72±5.98cm、BMI22.18±1.95)を、

・器具を用いたピラティス群(PG)

・ゆっくりコントロールする呼吸運動群(BG)

・器具を用いたピラティス+呼吸運動群(PBG)

・対照群(CG)

のいずれかに割り付けた。

器具を使ったピラティス運動は週2日、1日50分のトレーニングからなり、呼吸運動は週2回、1日15分を8週間行った。

さらに、PBGは各ピラティスセッション後に15分間の呼吸エクササイズを行った。

ピラティスのセッションは、リフォーマー、キャデラック、ラダーバレル、チェアバレル、スパインコレクターを用いて行われた。

呼吸エクササイズは、5秒の吸気と5秒の呼気のサイクルをコントロールすることを基本とした(15分間)。

【結果】

実施前後に肺機能、HRV、BCパラメータを測定した。

体重とBMIはPGとPBGで改善し、体脂肪率はPBGでのみ減少した(p < 0.05)。

PGとPBGはともに、HRV指標SDSD、SDNN、TP、HF、LFに有意な変化を認めた。

しかし、RMSSDはPBGのみで高く記録された。

※ root mean square of successive RR interval differences (RMSSD), the related standard deviation of successive RR interval differences (SDSD), standard deviation of NN intervals (SDNN), total power (TP), high frequency (HF), low frequency (LF)

同様の変化が肺のパラメータにもみられた。FVC、FEV1、VC、IC、TV、MVV、VEはPBGで増加した。

PGではVCとTVが増加した。BGでの変化はPEFとERVのみであった。

​※FVC: Forced vital capacity, FEV1: Forced expiratory volume in 1 s, VC: Vital capacity, PEF: Peak expiratory flow, IC: Inspiration capacity, ERV: Expiratory reserve volume, TV: Tidal volume, MVV: Maximum voluntary ventilation, VE: Minute ventilation.

FVC:強制換気量、FEV1:1秒間の強制呼気量、VC:肺活量、PEF:ピーク呼気流量、IC:吸気容量、ERV:呼気予備量、TV:一回換気量、MVV:最大随意換気量、VE:分換気量。

【結論】

この結果は、呼吸とピラティスを組み合わせたエクササイズが、HRV、肺機能、体組成に有意な効果をもたらすことを強調するものであり、健康増進に重要な意味を持つ。

家族介護者のストレスをヨガ、ピラティスで緩和できる

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37435003/

Bhattacharyya KK, Liu Y, Gothe NP, Fauth EB. Mind-Body Practice and Family Caregivers’ Subjective Well-Being: Findings From the Midlife in the United States (MIDUS) Study. Gerontol Geriatr Med. 2023 Jul 4;9:23337214231185912. doi: 10.1177/23337214231185912. PMID: 37435003; PMCID: PMC10331065.

Mind-Body Practiceと家族介護者の主観的幸福感: 米国における中年期研究(MIDUS)から得られた知見

【背景】

非公式/非職業的(=インフォーマル)介護は、より高いストレスと主観的幸福度の低下と関連している。

ヨガ、太極拳、ピラティスなどのMind-Body Practiceはストレス軽減のための活動の1つである。

【目的】

インフォーマルな家族介護者におけるMind-Body Practiceと主観的幸福感との関連を検討すること。

【対象者および方法】

Midlife in the United States研究において、インフォーマルな介護者のサンプルを同定した。

(N=506、M±SD年齢=56±11、女性67%)

Mind-Body Practiceを、

・定期的な実践(1つ以上の実践に「よく」または「頻繁に」参加)

・不定期な実践(「時々」または「まれに」参加)

・実践なし(「一度も」)

の3つのカテゴリーに分類した。

主観的幸福度は、5項目のグローバル人生満足度尺度(5-item global life satisfaction scale)と9項目のマインドフルネス尺度(9-item mindfulness scale)を用いて測定した。

重回帰モデルを用いて、社会人口統計学的因子、健康状態、機能的状態、介護特性の共変量をコントロールしながら、Mind-Body Practiceと介護者の主観的幸福感との関連を検討した。

【結果】

Mind-Body Practiceを定期的に実践している人は8.3%、不定期な実践は11.3%、実践なしは80.4%。

Mind-Body Practiceの定期的な実践は、共変量でコントロールした後、より良いマインド関連幸福感(b = 2.26、p < 0.05)およびより良い生活満足度(b = 0.43、p < 0.05)の両方と関連していた。

Mind-Body Practiceの実践は、若い人、女性、既婚者、高等教育を受けた人の間でより一般的であった。

【結論】

Mind-Body Practiceへの定期的な参加は、より高いレベルの生活満足度とマインドフルネスの幸福と関連しているのに対し、不規則な実践には有意な関連性がないことが示唆された。

ピラティスにより慢性腰痛が改善し、介入終了後半年でも有意な改善は継続する

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37132207/

Huang J, Park HY. Effect of pilates training on pain and disability in patients with chronic low back pain: a systematic review and meta-analysis based on randomized controlled trials. Phys Act Nutr. 2023 Mar;27(1):16-29. doi: 10.20463/pan.2023.0003. Epub 2023 Mar 31. PMID: 37132207.

慢性腰痛患者の痛みと障害に対するピラティストレーニングの効果:ランダム化比較試験に基づく系統的レビューとメタ解析

【背景】

腰痛(Low back pain ;LBP) は世界中で最も一般的な筋骨格系疾患の 1 つであり、生涯有病率は約 40%。

LBPにより生じる医療費と生産性の損失は膨大であり、社会と経済に深刻な負担を与えている。

LBP 患者の約 5.0 ~ 10.0% が慢性腰痛 (chronic low back pain;CLBP) に進行する可能性がある。

CLBPは通常3か月以上続き、持続的な痛みや機能制限により日常生活や仕事に支障をきたすことがよくあり、CLBPは急性LBPよりも治療が難しい。

CLBP患者では、内腹斜筋、腹横筋、腹直筋、多裂筋、腸腰筋などのコアの筋が弱くなっている。これらの筋肉が弱まると、腰椎の安定性と腰椎の可動性が低下します。ピラティスのトレーニングはこれらの筋肉を再活性化し、腰部の強度と安定性を高める。さらに、ストレッチベースの姿勢と呼吸制御により、腰椎の可動域が改善され、CLBP 患者の痛みや機能不全が改善される。

【目的】

ランダム化比較試験に基づく系統的レビューとメタ解析で慢性腰痛患者の痛みと障害に対するピラティスの効果について評価する

【対象者および方法】

2012年1月から2022年12月にかけて各種電子データベースを検索、ランダム化比較試験のみを選択し、解析。

本解析では、主要アウトカムは痛みと障害(pain and disability)とした。

【結果】

ピラティストレーニングは痛みと障害を有意に改善した

痛み

・Visual Analog Scale: 加重平均差 = -29.38, 95%信頼区間, -33.24 to -25.52, I²値 = 56.70%

・Pain Numerical Rating Scale: 加重平均差 = -2.12, 95%信頼区間, -2.54 to -1.69, I²値= 0.00%

障害

・Roland– Morris Disability Index: 加重平均差= -4.73, 95%信頼区間, -5.45 to -4.01, I² 値 = 41.79%

ピラティストレーニング終了から6ヵ月後でも、痛みと障害の改善は継続されていた。

痛み

・Pain Numerical Rating Scale:加重平均差=-1.67、95%信頼区間、-2.03~-1.32、I²値=0.00%

障害

・Roland– Morris Disability Index::加重平均差=-4.24、95%信頼区間、-5.39~-3.09、I²値=52.79%

【結論】

ピラティストレーニングは、慢性腰痛患者の痛みと障害を改善するための効果的な戦略であると思われる。

妊娠中にピラティスを行うと産後腹圧性尿失禁予防効果が期待できる

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37330774/

Urer E, Ozen N, Terzioglu F. Effect of pilates performed during pregnancy on postpartum stress urinary incontinence in primipara women. J Bodyw Mov Ther. 2023 Jul;35:228-232. doi: 10.1016/j.jbmt.2023.04.022. Epub 2023 Apr 20. PMID: 37330774.

妊娠中のピラティスが初産婦の産後腹圧性尿失禁に及ぼす影響

【背景】

腹圧性尿失禁Stress urinary incontinence(SUI)は、妊娠中および産褥期の解剖学的・生理学的変化によって起こる尿失禁(UI)の大部分を占める。

【目的】

産褥期のSUI発生予防におけるピラティスの効果を評価すること。

【対象者および方法】

私立病院でレトロスペクティブ症例対照研究を実施した。

対象は、当院で経膣分娩し、産後12週目に定期管理のために入院した患者。

症例群は、妊娠12週目から出産まで週2日ピラティスを行った。

対照群はピラティスを行わなかった。

データは「ミシガン失禁症状指数;Michigan Incontinence Symptom Index」を用いて収集された。

SUIの有無を検出するため、研究者は女性に「日常生活で尿失禁の問題がありますか」と尋ねた。研究の報告にはSTROBE研究チェックリストが用いられた。

【結果】

各群71名の合計142名の女性を対象とした。

そのうち39.4%の女性に産後SUIがみられた。ピラティスを行った女性の重症度スコアは、ピラティスを行わなかった女性よりも統計学的に有意に低かった。

【結論】

妊娠中、女性は医療専門家により産前産後にピラティスを行うよう勧められるべきである。

(レトロスペクティブ症例対照研究はRCTよりエビデンスレベルが低いです)

絶え間ないストレスや心身のバランス不調により緊張した組織を解放するために、脳脊髄液の循環を促す頭蓋仙骨療法としてピラティスが効果的である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37455934/

Yang H, Wang X, Wang X, Yang J, Zhang W, Ding Y, Sang T, Chen W, Wang W. Effect of mindfulness-based mind-body therapies in patients with non-specific low back pain-A network meta-analysis of randomized controlled trials. Front Aging Neurosci. 2023 Jun 29;15:1148048. doi: 10.3389/fnagi.2023.1148048. PMID: 37455934; PMCID: PMC10340124.

【背景】【目的】

非特異的腰痛(NLBP)の治療は非外科的治療と心理社会的介入に焦点を当てるべきである。

マインドフルネスに基づく心身療法 mindfulness-based mind-body therapy (MBMBT) は、心と体の両方を治すことに重点を置いたアプローチである。

ヨガ、アーユルヴェーダマッサージ、ピラティス、頭蓋仙骨療法、瞑想、瞑想+ヨガ、気功、太極拳とダンスは治療のバックボーンとしてマインドフルネスを使用しており、どちらも精神的なリラクゼーションと理学療法を組み合わせたもので、患者の痛みと生活の質を効果的に改善し、心理的な健康を促進することができる。

ただし、MBMBT の場合、異なる治療法は異なる特性を持ち、NLBP 患者に対して異なる効果をもたらす。

そこで、NLBP患者の治療におけるさまざまなMBMBTの効果を比較するために、ネットワークメタ解析(NMA)を実施した。

【対象者および方法】

各種データベースから、NLBP患者の治療にMBMBTを適用したランダム化比較試験(RCT)を検索し、2人の研究者が独立して文献をスクリーニングし、情報を抽出し解析した。

【結果】

3,886人のNLBP患者と9つのMBMBT(ヨガ、アーユルヴェーダマッサージ、ピラティス、頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラルセラピー)、瞑想、瞑想+ヨガ、気功、太極拳、ダンス)を含む合計46のRCTが含まれた。

NMAの結果は以下の通り。

※ 「Surface under the cumulative ranking」(SUCRA)は、複数の治療法や戦略を比較するための方法の一つ。「その治療法が上位にランクインする確率」を表している

参考 https://www.ttoku3.com/statistics/375

疼痛と身体障害の改善

1 頭蓋仙骨療法[ surface under the cumulative ranking(SUCRA):99.2%および99.5%]

2 その他の手技(SUCRA:80.6%および90.8%)

3 ピラティス(SUCRA:54.5%および71.2%)

Disability

Craniosacral Therapy (99.5%) > Other Manipulation (90.8%) > Pilates (71.2%) > Yoga (57.7%) > Meditation (56.1%) > Ayurvedic Massage (53.6%) > Other Exercises (43.7%) > Tai Chi (36.8%) > Qigong (36.6%) > Usual Care (24.0%) > Meditation + Yoga (18.6%) > Dance (11.3%)

身体の健康の改善

1 頭蓋仙骨療法(SUCRA:100%)

2 ピラティス(SUCRA:72.3%)

3 瞑想(SUCRA:55.9%)

Physical health

Craniosacral Therapy (100.0%) > Pilates (72.3%) > Meditation (55.9%) > Other Manipulation (52.9%) > Other Exercises (50.5%) > Qigong (48.6%) > Ayurvedic Massage (37.7%) > Yoga (18.0%) > Usual Care (14.2%)

メンタルヘルスの改善

1 頭蓋仙骨療法(SUCRA:100%)

2 瞑想(SUCRA:70.7%)

3 ピラティス(SUCRA:63.2%)

Mental health

Craniosacral Therapy (100.0%) > Meditation (70.7%) > Pilates (63.2%) > Other Exercises (55.9%) > Other Manipulation (48.9%) > Qigong (36.0%) > Ayurvedic Massage (32.5%) > Yoga (31.0%) > Usual Care (11.8%)

【結論】

このNMAは、頭蓋仙骨療法Craniosacral TherapyがNLBP患者の治療に最も効果的なMBMBTである可能性を示しており、臨床利用を促進する価値がある。

ピラティスによる慢性腰痛軽減は、心理的要因(痛みの破局的思考(Pain catastrophising)と運動恐怖症(kinesiophobia))が媒介。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37277290/

Wood L, Bejarano G, Csiernik B, Miyamoto GC, Mansell G, Hayden JA, Lewis M, Cashin AG. Pain catastrophising and kinesiophobia mediate pain and physical function improvements with Pilates exercise in chronic low back pain: a mediation analysis of a randomised controlled trial. J Physiother. 2023 Jun 3:S1836-9553(23)00043-7. doi: 10.1016/j.jphys.2023.05.008. Epub ahead of print. PMID: 37277290.

慢性腰痛におけるピラティスエクササイズによる痛みと身体機能の改善は、痛みの破局的思考(Pain catastrophising)と運動恐怖症(kinesiophobia)が媒介:無作為化比較試験の媒介分析

【背景】

慢性腰痛症(CLBP)への対応に関し、国際的なガイドラインでは、第一選択治療として運動療法を一貫して推奨している。

運動の効果は生物学的、心理学的、社会的メカニズムを通じて発揮すると考えられるが、そのメカニズムは複雑で完全には解明されていない。

心理学的変数(例:Pain catastrophising 、kinesiophobia )は、運動介入がどのように変化をもたらすかを説明する上で重要な媒介効果であると認識されるようになってきている。

【目的】

因果関係媒介分析を用いて、ピラティスのエクササイズによる疼痛強度の低下や身体機能の改善効果が、痛みの破局的思考(Pain catastrophising)と運動恐怖症(kinesiophobia)の変化によって媒介されるかどうかを明らかにすること。

【対象者および方法】

慢性腰痛のある255人(女性75%、平均47歳)を対象。

ピラティス(週1回、2回、3回)を冊子対照(booklet control)と比較する4群ランダム化比較試験の二次因果関係媒介分析。

ピラティス群の参加者は、6週間、監督された個別指導のマットおよび器具を用いたエクササイズを行なった。セッションは1時間。

ピラティスの3つのグループは、週1回、週2回、週3回という量を比較した。

対照群には、情報冊子(日常生活動作の姿勢や動作に関する推奨事項、腰痛に関する情報、背骨と骨盤の解剖学的な情報が記載)を提供された。情報冊子以外の追加介入は行わなかった。

アウトカムとメディエーターの評価に使用されたすべてのアンケートとスケールは、ベースライン時、無作為化後6週間と6カ月で測定された。

因果関係媒介分析の主要アウトカムは、

・疼痛強度 Numeric Rating Scale(0~10点)

・身体機能 Roland-Morris Disability Questionnaire(0~24点)

であり、無作為化後6ヶ月の時点で評価された。

推定されるメディエーターは、

・痛みの破局的思考(Pain Catastrophising Scale:0~52点)

・運動恐怖症(Tampa Scale of Kinesiophobia:17~68点)

であり、無作為化後6週目に測定された。

各媒介因子モデルについて、介入-媒介因子効果、媒介因子-結果効果、総自然間接効果(TNIE)、純粋自然直接効果(PNDE)、総合効果(TE)を推定した。

intervention-mediator effect, the mediator-outcome effect, the total natural indirect effect (TNIE), the pure natural direct effect (PNDE), the total effect (TE).

【結果】

主要アウトカムである疼痛強度と身体機能において、無作為化後6週間で、情報冊子のみと比較して、すべてのピラティス群に統計的有意差が認められた。ピラティスの3群(週1回、週2回、週3回)で臨床的に有意な差はなかったため、今回の分析では1つのグループにまとめた。

痛みの破局的思考(Pain catastrophising)は、疼痛強度(TNIE MD -0.21, 95% CI -0.47 to -0.03)および身体機能(TNIE MD -0.64, 95% CI -1.20 to -0.18)に対するピラティスのコントロールと比較し効果を媒介した。

運動恐怖症(kinesiophobia)は、疼痛強度(TNIE MD -0.31, 95% CI -0.68 to -0.02)および身体機能(TNIE MD -1.06, 95% CI -1.70 to -0.49)に対するピラティスのコントロールと比較した効果を媒介した。

各媒介因子によって媒介される割合は中程度(21~55%)であった。

【結論】

慢性腰痛に対してピラティスを行った場合、痛みの破局的思考(Pain catastrophising)や運動恐怖症(kinesiophobia)の軽減が、疼痛強度や身体機能の改善への経路を一部媒介した。これらの心理的要素は、慢性腰痛に対する運動療法を処方する際に、考慮すべき重要な治療ターゲットとなりうる。


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