内受容感覚 「自分の感情を読み取る能力」を鍛えて メンタルをうまくコントロールしよう!

突然ですがテストです! 

Q. 楽な姿勢でお座りください。手で脈を触ることなく、 自分の心臓の鼓動を感じることができますか? 

A. 感じることができる!  B. 全然わからない!!

 

あなた「内受容感覚」ある?ない? 今、注目を集める「内受容感覚」って何? 

突然はじめた上のテストは、あなたの「内受容感覚」を測定する方法のひとつ。「内受容感覚」はあまり知られていないが、「あらゆる内臓の受容体から伝達される体の状態を脳が認識すること」で、人が幸福に生きていくのにとても大きな影響力をもっている。

内受容的なシグナルへの感受性によって、自身の感情を律する能力が決まり、それが不安や抑うつなど、メンタルヘルスにまつわる問題の起こりやすさにも関わってくるということが、科学で明らかになってきている。内受容感覚に関する研究は、神経科学や心理学のなかでも特に急速に発展している領域で、毎月のように多数の新しい論文が発表されている。このような研究で得られた発見は、自分の身体に「耳を傾ける」新たな方法を教えてくれる。

それは多くの心の問題を治療するのに役立つかもしれず、自分の心臓の鼓動に耳を澄ますことで、精神面のケアにもなるという。

内受容の対象とは、循環器、肺、消化器、膀胱、腎臓など、内臓が発するあらゆるシグナルであり、脳と内臓の間では、つねに双方向的なコミュニケーションが行われているが、ほとんどは意識の範囲外で処理されている。たとえば「血圧を一定に保つために脳と身体の間で自動的に起こっているフィード バック」や「血糖値を安定させるのに役立つ各種のシグナル」など。一方「筋肉の緊張」「胃の締めつけ」「心臓の鼓動のような感覚」などの多くは、自ら気づくことができるはず。こうした内受容における身体のシグナルを認識することが、自分の感情や身体の状態を理解し、調整する助けになる。

 

体内への感覚心身の健康に影響する 

「人がある感情をもつという現象は、身体の状態の無意識的な変化から始まる」という説を唱えるのは南カリフォルニア大学のアントニオ・ダマジオ教授。たとえば、怒っている犬を見ると、筋肉がこわばったり、心臓がドキドキしたりする。こうした生理的な反応は感情を自覚する前に起こるのであり、身体の内部で起こった変化を脳が内受容感覚を通して検出して初めて、人はその感情を実際に体験し、それを行動に反映することができるのだ。

脳と身体の間のやりとりがなければ、幸福、悲しみ、興奮といった感情も存在しないだろう。

その証拠として教授は「前頭前野腹内側部などに損傷があり、無意識的な身体反応を発生させることができない患者に恐ろしい交通事故の写真を見せた際、生理的反応がまったく見られず、何の感情も示さなかった」と言う。

今では、脳に損傷がまったくなくても、自らの内受容的なシグナルをうまく感じ取れない人がたくさん存在しており、その度合いはさまざまなテストで測れることが明らかになっている。その方法の一つが、被験者に自分の心拍を1分間数えてもらい、それを実際の数値と比較するというものだ。また、自分の身体が発するシグナルにどのくらいの頻度で気づくのか、アンケートをとって調査する手法もある。

いずれの場合も、個々人の反応は多岐にわたるが、それは感情を認識し、コントロールする能力と関係しているようだ。つまり、身体的なシグナルを正確に検知することに長けていれば、ある状況に対する自分の感情をより細かく解析できる。その結果、最も適切な反応をするための、より賢い選択が可能になるというわけだ。

このようなプロセスは、多くの精神疾患において重要な役割を果たしている可能性がある。うつ病患者は、心拍検知のテストにおいて、内受容の感受性が乏しいという結果が出ることがよくある。これらの患者においては、無気力感や感情の麻痺、つまり「何も感じない」という感覚の背景に、身体のシグナルを感じる能力の低下があるのかもしれない。反対のケースもある。たとえば、不安障害の患者が、心拍数のわずかな変化を実際よりも大げさに捉えることがある。その場合、自分の感情を「針小棒大」に受け取ってしまい、パニックを増幅させてしまうことになる。

  

「自分の感情を読み取る能力」を鍛えて、メンタルをうまくコントロールするには「運動」がいい!

内受容感覚をトレーニングする方法!

このような問題を解決するための治療法はまだできたばかりだが、初期段階としての見通しは明るい。ある研究チームは、不安障害のリスクが高いグループとして知られる自閉症の大人121 人を対象に、内受容感覚を改善するとストレスが減るかどうかを調べた。

一連の実験のなかで、被験者の半分には手などを使わず自分で心拍数を測定するタスクに繰り返し取り組んでもらい、その都度、結果について詳細なフィードバックを与えた。

他方で、対照グループに入った残りの半分には、人間の発話における感情的な響きを検知できるようにするための、音声認識トレーニングを受けてもらった。こちらのタスクも被験者たちの生活には充分に役に立つものだが、特に内受容感覚の改善を目的としたものではない。

8月に医学誌「ランセット」で報告された結果によると、内受容感覚をトレーニングされたグループは、3ヵ月間の追跡調査において、不安に悩まされる率が著しく低下しており、その31%が不安障害から完全に回復した。一方、対照グループではその割合が16%にとどまっていた。「実験によって、生理的な経験を認識する能力、かつそれを“針小棒大にとらえない”能力が高まったのです」と研究チームは述べる。

 

マインドフルネスは「やり方」に注意

別の研究チームでは、内受容的な感受性を高めるために、マインドフルネスの活用が検討されている。もちろん、マインドフルネスにはさまざまな種類があり、なかには精神的な体験に重きを置くものもある。

しかしワシントン大学のシンシア・プライス教授が実験に使用しているマインドフルネスのプログラムは、特に連動して起こる体内の変化に集中し、それを捉えられるようになるためのものだ。

プライスの実験の被験者は、薬物乱用の問題を抱える人たちだった。こうした状態になってしまう人は、感情のコントロールがうまくいかない場合が多く、それゆえに再発を避けることが余計に難しくなる。

また重要なことに、 まるで自分が自分から遊離しているような感覚を多くの人が訴えており、それが問題の一因となっている可能性がある。

プライスのこれまでの研究結果によると、この治療法は抑うつ症状や欲求の軽減に成果をあげている。1年間にわたる研究においては、薬を断てるようになった被験者の割合が、標準的な治療を受けた人に比べてかなり高かったという。

この治療法が多くの人々の助けになることを、彼女は望んでいる。「こうしたスキルは、健康問題を抱えているかどうかにかかわらず、すべての人の役に立つはずです」

 

運動がメンタルヘルスに良い理由 

最も興味深いのは、こうして新たに内受容へと目を向けることで、なぜある種の身体的運動が精神の健康によいのか、その原理を理解するヒントが得られるかもしれないということだ。

ひとつには、定期的な運動によって、脳が受け取るシグナルの性質が変わりうるということがある。「運動不足で調子が悪くなると、不安を連想させるような症状が出やすくなります」と研究者は言う。

「身体的にだろうが感情的にだろうが、難題に向き合っているときには心拍数が上がるでしょう」。しかし体を鍛え、心臓のような器官が負担に耐えられるようになると、状況の変化に対して身体がより回復力を発揮するようになり、それが心の健康にも波及していくのだ。

同じくらい大事なことだが、運動をすると内受容的なシグナルに注意が向くようになり、自分の身体の変化をより正確に読み取り、解釈できるようになる。

「アスリートなら全員、感情をコントロールする能力がとても高いというわけではありません」と研究者は言う。「けれども、アスリートが有利な条件下にいるのはたしかです。それはまさに、内受容感覚のシステムがよりしっかりと調整されているからです」

役に立つのは有酸素運動だけではない。不安を減らすために、筋力トレーニングも特に効果的でありうるというエビデンスが次々と出てきている。

それに対する説得力のある説明として、トレーニングによって筋肉から受け取る内受容的なシグナルに、何らかの変化が生じるというものがある。 筋肉を鍛えることで、身体が丈夫になるのを実感し、脅威に対処する能力も高まる。これが自尊心や精神的な回復力をも強化するのだ。

内受容感覚とは、私たちに備わっている感覚のなかでも、きわめて重要なものの一つであるようだ。そして、それが発するシグナルにもう少し注意を払えば、身体的にも精神的にも、より健康になれるかもしれない。

 

Aを選んだあなたは内受容感覚ばっちり? Bを選んだあなたは今日から意識してみよう

ピラティス・ヨガで内受容感覚を高めて、メンタルを上手にコントロールしましょう!

 

<出典> COURRIER JAPON 『「自分の感情を読みとる能力」を鍛えれば、メンタルをよりうまくコントロールできるようになる』 https://courrier.jp/news/archives/263479/


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